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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

「えッ――敵は、敵討は?」

「何を隠そう、俺がその敵だ」

「山浦丈太郎?」

「そうだ、山浦丈太郎とはこの俺のことだ。今では、万田龍之助を生かそうと殺そうと俺の心持一つだ」

「――――」

ヌケヌケとこんな事を言ってのける、赤崎才市の掛引沢山な言葉に圧倒されて、お染は唯もう轉倒するばかり。

「あんな小僧を捻っても大した誉れにもなるまい、返り討は日延べとして、随分助けてやらないものでもないが――」

「助けて下さい、あの人を、お願いだから助けて下さい」

お染は後前の分別もありませんでした。万田龍之助が助かることなら、どんな犠牲でも忍んだことでしょう。

「随分助けてやらないものでもないが、それには望みがある」

「?」

「お前の持っている肌守の中に、蜘蛛の巣のようなものを書いた、絵図面の切れがある筈だ。それを渡して貰おうか」

「――――」

「どうだ、お易い事ではないか、その絵図面一つで、お前の許婚が助かるのだ」

「でも、これは母さんが、誰にも見せてはならないと――」

お染は犇と胸を抱くのです。

「よしよし其処に隠してあると言うのか、――見せて悪いものなら、眼をつぶって受取ろう、どうだ、これでは?」