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おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
「新青年」1939(昭和14)年11月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页
そう言った無法な心持が、万田龍之助の若い血潮を湧き立たせたのも無理のない事でした。
「龍之助様、何処へいらっしゃいます?」
旅仕度もそこそこ、八王子の町を飛出した万田龍之助の後から、斯う声をかけたものがありました。
龍之助が三年前小田原を追われてから、世間を狭く身を寄せた、遠縁の高山某の一人娘お染、龍之助より一つ年上の十九ですが、郷士の子に生れて、都振りの華やかな空気の中に育ち、取なしが初々しいうちにも、艶めかしく愛くるしいところのある娘でした。
「いや、なに、ツイ其処まで」
龍之助は少しヘドモドしました。
「龍之助様、箱根へいらっしゃるのでしょう」
「え?」
「私も一緒におつれ下さい、お願いでございます」
「――――」
町外れの木下闇へ誘い入れると、顔を染める青葉の蔭にお染は可愛らしく手を合せるのです。
「龍之助様、私にもこんな手紙が参りました。御覧下さい」
お染が懐から取出したのは、龍之助が受取った不思議な手紙と全く同じ筆跡で、斯う書いてあるのです。
――万田龍之助は、親の敵を討つために、箱根の間道へわけ入ることになっている。相手は山浦丈太郎という勇士、龍之助一人では討ち取ること思いも寄らない。