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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

さて私は十三銭のメシを食って、それから二十銭のコーヒーを飲みに行くのだったが、

(「ボン・ジュール」はマンネリズムだ。どこか知らないところへ行ってみよう。)

そこで、吾妻橋の雷門寄りにある「マロミ」という、今まで一度も入ったことのない店の扉を押した。そしてコーヒーを注文して、煙草へ火をつけたところへ、思いがけないサーちゃんが入ってきた。ここで誰かと会う約束をしたらしく、チョロチョロと店のなかを見回して、私に気づくと、ハッと顔を赧くした。約束の人は来てないらしく、サーちゃんは私の側へ来て、

「先日はご馳走さまでした」

そう言って、もじもじと立っているのに、

「まあ、おかけなさい」

と私は言った。店にはアベックの客が多かった。

サーちゃんは、これもまた変に赤い眼をしていた。ぽんたんの眼に似ている。

「……?」

その私の視線に、前に坐ったサーちゃんはまた顔を赧くして、

「ヘンでしょう、眼が……」

ドギマギした声だった。その声といい、むやみと顔を赧らめるところといい、何かサーちゃんらしくなかった。

「あたし、泣いちゃったの」

「泣いた?」

「ええ、今し方、ワーワー泣いたところなんですの。