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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「実家は、この辺……」

「いや、玉の井の傍ですよ」

私はそのまま聞き流していた。小柳雅子の家も、寺島と聞いていたのだが、そのことはその時頭にこなかった。

×月×日。

朝、家でA新聞のカコミ評論を書く。(※二)

午後、浅草に行く。

*

この寒いのに、依然として愛玉只がある。人も入っているのに驚く。(※三)

*

犬と子供(※四)

ブーニンの回想記の中のチェーホフの言葉。――「ここに大きな犬と小さな犬とがいるとする。しかし、小さな犬は、大きな犬がいるということで勇気がくじけてはならない。――そして神の与えた声で吠えなければ……」

*

夕方、朝野の下宿を訪れる。

「珍しいですな。……小柳雅子に会わせろといった顔ですな」

図星だ。だが雅子には会わなかった。(※五)

朝野はまたしても私のことを「鯛に食い飽きて鰯を食おうとしている男」と言った。そうしつこく言うと、私はほんとにそうなるぞ。

「悪漢に一日に三、四度ずつ、彼が正直の権化だと言ってやれば、彼が少なくとも、完全な『正義派』になることは確実である。しかしその反対に、正直な男をあまりしつこく悪漢呼ばわりすれば、彼は、自分がまんざら悪漢でなくもないことを証明したい、旋毛曲りな欲望を起すだろう」