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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

テヘッ」

おでこをポンと叩いた。大きな音がした。そしてそのせいか、――末すぼまりのとっくりズボンの、見るからに何か心もとない足もとを、よろよろとさせるのだった。

「ゴロちゃん。……」思わず私は叫ぶように言うと、

「それなんで」

と奇怪なレヴィウ役者は独り合点をして、

「それが面白いんで」パンと手を打つ。

「何が?」

それに答えず、

「気がついて見ると、驚くなかれ、なんにもないんだ。そしてドロン」

「何がないのさ」

「道具。鮎ちゃんの道具。利口な女ですね、あの女は。――あの女は豪遊な道具を持ってるなア」

「はじめから話してくれよ」

すると相手はキョトンとした顔でしばらく私を見ていたが、

「寂しかった? こう言うんですよ」

「フンフン、上海から帰ってね」

「ああ、寂しかったよ。(これはゴロちゃんの言葉のはずなのに、女の声のようにして言って)ところがね、鮎ちゃんは、諸君驚くなかれ、あんまり驚かせろ! 上海で男をつくって、その男と手に手を取って帰ってきたんだが、ちっともそんな気振りを見せない。だから、こっちはちっとも知らない。そのうち鮎ちゃんは自分の道具をひとつふたつとアパートから運び出して、気がつくと、なんにもない。