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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

と聞くと、

「もっぱらこの方で……」

盃形に丸めた指を口に持って行って、

「クイクイとね」

金は? 言えないでいると、

「鮎ちゃんって、いいとこあるなア。鮎ちゃんに貢いでもらっているんですよ」

――私はドサ貫から聞いた話を結局ゴロちゃんに言わないで別れた。ゴロちゃんはクイクイと盃を傾けるまねをすると、それでとみにその欲望に煽られたらしく、それを舌なめずりに現わして「パイ一、どうです」と言い、私が「仕事があるから」と断わると、あっさり「じゃまた、――元気で」と私が言わねばならぬようなことを逆に言って、例の心もとない足をからませるようにして、それは前からの歩き癖ではあるのだが、一層ひどくした蹌踉たる足どりで、折からの銀座の出盛りのなかに紛れ込んでしまった。で、言えなかったのだが、――ゴロちゃんのあまりの異様さに私はたまげて、呑まれたような想いで、それで言えなかったところもあるのだ。私は、別れたあとでも、精神的眩暈からしばらくは立ち直ることができなかった。

「ゴロちゃんはどうかしている」

そう言う私まで、頭がオカしくなったような気持だった。ところで、その混迷を一筋あざやかに貫いているものがあった。