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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

じゃないですか。おや、何をするのかと思うと、湯たんぽを取り出した。薄汚いボロで包んだ湯たんぽ。そいつを、よいしょと抱えて僕の前に坐った。あれあれと思っていると、ボロをめくって、湯たんぽの口を出し口金を外しにかかった。え? と眼を丸めた時は急須の上に湯たんぽの口を当てがって、驚くじゃないですか、今の今まで婆さんが足を当てていた湯たんぽの湯を、どくどくッと……。いや全く魂消たのなんのって。だが婆さんはケロリとしたもんで、湯たんぽの湯でお茶を出すと、へい、どうぞ。はあとは言ったが、心のなかではゲッといったですな。婆さんは自分の茶碗にもその気持の悪いお茶をついで、――冷めないうちにどうぞ。そう言うと、平然として自分の茶碗を取り上げて、コクリと呑んで、ああ、おいしい。――ああ、おいしいは僕の創作ですがね。どうです、この話は」

「ふうむ」

ズー鍋が来た。生きた鯰を頭ごと賽の目にブッタ切ったその血だらけの肉片は、鍋のなかでまだピクピクと動いている。

「面白いけど、書きにくくてね、そのネタは」

そう言いながら朝野は、火鉢の曳出しのような恰好の木箱を傾けて、そのなかの葱を、鯨鍋のなかに思いきり流し込んだ。