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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
小さく刻んだ薬味の葱は鍋のなかで堆高く山を築いた。
「書きにくいでしょうな」
「それを、やっと書いたんです。さっきは自信があると言ったが、自信より苦心ですな。とても苦心しただけに突っ返されると、くやしくて……」
鍋の鯰が突如、髭をピクリとあげた。へえッと驚いた次の瞬間、ぐにゃりとなって、もう大分熱くなったはずのしたじのなかに沈んで行った。私は何か心穏やかでなかった。
「ちっともおもしろくない、ユーモア小説じゃないと言うんですよ。編集の奴に、その味はわからんのですな」
朝野はもう銚子を空にしていた。
「僕が払うですよ、僕が」
朝野はまるで喧嘩腰だった。そこを出て、国際通りに行くと、
「K劇場へちょっと行ってみるですかな」
私は迎え酒ですっかり真赤になった顔を撫でつつ、
「白昼酔っ払って行くのは、どんなものですかね」
「かまわんじゃないですか」
「しかし……」
向い側に渡って、漫才小屋のT館の方へ足を進めた。K劇場の楽屋口はその裏手にある。
「行ってみようじゃないですか」
「さあ……」
ためらう私の眼に、向うから洋服に草履ばきでやってくる末弘春吉の姿が映った。末弘もすぐ私を見つけて、T館の前で足をとどめて、やあこれはといったうなずきを示した。