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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

私は、いつかこうした日のあることを知っていなかったろうか。可哀そうな私の慕情よ。

「会はまあ、しかしやろうじゃないですか、ね」

朝野が言うのに、私はただうなずいていた。私は私のうちに秘められた可憐な小柳雅子の影像を、――そうして消えるのから守ろうとでもするようにじっとみつめていた。

小柳雅子よ。

だが、私のうちの小柳雅子は、さよういつか私が見た遠くの空の雁のように、見るみるすげなく遠ざかって行くのだった。消えうせて行くのだった。でも私のうちの慕情はおかしなことに、これだけは、あたかも鳥の去ったあとの巣のように、消えやらず、残っていた。

……………………

*

浅草の広小路は、吉原と同じように昼と夜とではまるで表情を異にするのである。夜になると、――昼間、のどかな陽が射していたその片側に、食いものの屋台がズラリと立ち並び、多くは暖かい食いものを売るその暖簾のなかには、どれもいっぱい人がつまり、顔は隠されるが下は丸見えのその足もとには、どこから現われるのか、眼を爛々と光らせた犬がうろうろしていて、まことに、なんというかさかんな光景を呈するのである。