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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
「あたしは代りに、郷里へ帰ろうかとおもってます」
「代りに?」
ドサ貫は横を向いていやな咳をして、それには答えず、
「ミーちゃんは花屋敷に入りました」
「花屋敷?」
「花屋敷が今度復活するそうで。なんでも浅草楽天地という名前になるとか。そこのショウに入ることになったんです」
「それはよかった」
「でもね、見世物小屋の踊り子ではね、どんなもんですかね。僕もミーちゃんから誘われたが、断わりました」
へい、お待ちどおさまと、玉葱に肉がチラホラ混っている牛めしが前に置かれた。ドサ貫は箸を割ると、せっかちにシャキシャキと箸をこすり合わせ、どうやらひどく空腹だったらしい様子をあらわにしつつ丼を口の前に持って行ったが、急いだせいか、めしの湯気にむせて、苦しそうにせき込むのだった。やむなく手にした丼を置いて、咳をとめようと胸をこごませたが、どうしても咳がとまらない。するうち、箸も投げ出して、倒れるように暖簾から出て行った。
外で咳をとめて、戻ってくるのだろうと思った私は、気にしながらも、ひとりで牛めしを食っていた。何分いやな咳なので、当人がいなくなったあとでも、暖簾のなかの客たちは気持悪そうな眼をジロジロとこっちに向け、その眼を私ひとりが引き受けねばならない。