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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

――但馬は今は浅草にいないが、みんなの心には但馬が依然として存在している。そんな感じですな」そう言って、唇が火傷しそうなくらいにまで吸い尽した煙草を、さらに、首をのばしてパッパッと唇を鳴らして吸うと、熱そうにして灰皿に捨て、

「さあ、出ましょうか」

そして立ち上りながら、ふと気づいた風で、

「倉橋君は、但馬をどうして知っているんですか」(朝野はいささか奇型的な感じがするくらい、脚が短かった。恐ろしく胴長で、――誇張して言えば、立っても、坐ってた時と高さがあまりかわりないくらいだった。)

「その人の細君というのと、田島町のお好み焼屋で知り合いになって……」

「惚太郎、――じゃないですか」

と朝野が遮った。「惚太郎というお好み焼屋でしょう」

「惚太郎」で私はまだ朝野に会ったことがない。

「朝野君は、あすこへ……」

「この頃は行かんですが……」

私たちは部屋を出た。急な階段を朝野は先に降りながら、

「あのお好み焼屋は、これがまた但馬の、――作品と言いますかな。あれは、ご亭主の惚太郎が出征したあとで細君が開いた、――家でやり出したんですがね。但馬が細君に勧めてやらしたんですよ」