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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

だが、それは、私の不注意で、私が出さなかったのではなく、惚太郎が出てこないのだ。私が「惚太郎」を紹介する場面の時は、いつも惚太郎は家にいなかったのである。細君に聞くと、戦友のところへ遊びに行くらしいのだ。「よっぽど懐しいものと見えますね。――戦友の方も、家へいらっしゃるんですよ」

ところで、私は、素人漫才屋が「惚太郎」でオダをあげるという朝野の言葉で、亀家ぽんたんのことを頭に浮べた。

――ぽんたんは、つい先頃まで、ドサ回りの役者だった。まだ二十前の若者で、全然下回りの役者だったが、それが、ぽんたんの言葉で言えば「兄貴」の鶴家あんぽんと組んで、漫才師になった。なった当座は、あちこちで試験的に出されるので、すこぶる忙しく、そんな時分に、私は「惚太郎」でよく一緒になったが、全く意気軒昂たるものだった。一月何百円という収入まで聞かされ、(幾分法螺もあるだろうが)――私は、ドサ回りの役者のピーピー状態から、一躍そんな金が取れるようになったのだから、オダをあげたくなるのも無理からぬことと思い、また、漫才全盛の現在とはいえ、いきなり舞台に立てば、それで勤まり稼げるとは、いやはや恐るべきことじゃと思った。