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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

ただそういう看板だけで、内容は普通の漫才とちがわない。)始めると、細君は別に他のと組んだ。そしてその細君が別口で稼いでくるから、あんぽんの稼ぎが三十円でも、どうにかやって行けるわけだが、――独り者のぽんたんの方は、そういう別口のがないので、たとえ独り者の間借生活でかかりがかからないとはいえ三十円ではやって行けないのであった。そこで「兄貴」に、――場末の小屋に出て稼ごう、稼がなくちゃ顎が干上ると言うのだが、あんぽんは、――格が下るから駄目だ、ここが辛抱のしどころだと言って、承知しない。

――という話を、私は「惚太郎」の細君から聞いた。

「ぽんたさんは、先頃あんなに元気だったのに、可哀そうに元気がなくなっちゃってねえ。――漫才は一人では稼げませんからねえ」

ぽんたんは意気軒昂の頃は、

「――なんか、おもしろいネタありませんか。ひとつ教えて下さい。どうも、いいトリネタがなくて」

と私の顔を見ると、言ったものだが、近頃はとんと言わなくなった。黙って五仙の「やきそば」を、ながいことかかって食っていた。――

「小説なんかも、同じじゃないですかな」

と、朝野が台に肘をつき、その手に顎をやって、人を小馬鹿にするような恰好をしながら、言った。