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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

もともと矢場は浅草名物で、――昔の矢場と今の弓場とはもちろん違うけど、まあ、その復活とも言えるですな」

「なるほど」

雅子は釜のなかから小さな貝柱をつまんで、ひとつひとつ口に入れていた。もうそんなに熱くはないだろうが、それでも、ちょっとした熱さでも火ぶくれができやしないかと思われるような、皮膚の薄い、やわらかい唇をちっとそらせて、貝柱を歯にはさむようにするのだが、その歯はかすかながら青味が感じられるほどの透き通るような白さで、そしてその唇は、外側にだけうっすらとルージュを塗っていて、だから唇をそらせると、ルージュの塗ってない、でも美しい薄紅色をした唇の内側が覗かれて、赤いルージュと白い歯の間のそのなまなましい濡れた色は、なんとも言えず悩ましく眼に迫るのだった。私は、いわば私が一生懸命隠していた官能を実に簡単に探り当てられ、みごとにチクリと刺された想いで、恥かしいような哀しいような想いであった。そうだ。雅子の悩ましく唇をそらせたそんなポーズは、もとより悩ましい印象を意識してのものではないだろうが(と私は思ったが)、それはまさに嬌態には違いなかった。その嬌態から、朝野は私の眼を放そうとするように、