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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

くに子は一メートル五〇くらいの背丈で、小太りの、かなりなきりょうよしであり、眼も口も鼻もちまちまとしていた。

「くに子って柄かね」と近所のかみさんたちは云いあった、「としだってはたちを二つ三つ越してるよ、十八だって、――ふん、きっとどこかのインチキバーの女給か、小料理屋からでも攫ってきたんだろうさ」

「それならまだしもさ、夜になるとどこかの街の角にでも立ってたんじゃないのかい」

「やさしそうなお面をしてえるけど、一と皮剥けばあれで相当なばくれんだよ」

例の如きもので、かくべつ悪意があるわけではない。よそからはいって来る者は、例外なしにこの種の評をあびせられるのだ。もちろん根拠のないものだから、四、五日も経つか、口でもききあうようになれば、これらの評はすぐに逆転するばかりでなく、たちまち親類以上のちかしいつきあいに変るのであった。

だが、この場合はそういうふうにははこばなかった。細君であるところのくに子が、隣り近所とつきあわず、水道端へも出て来ず、買い物にでかける姿もみせないのである。――これまで同様、そういうことは徳さんがぜんぶやった。風呂敷や手籠を持って買い物にもゆくし、水道端で洗濯もする。