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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

という仕組になっているようだ。たんば老人の遠慮がちな意見によれば、これは日本のさいとり経済を救うための、必要な政治的操作なのだそうで、これを聞いた寒藤先生は肩をいからせ、たんばくんは赤じゃないのかと非難し、そんな危険思想の持ち主だとすると、将来からきめにあうだろうと云った。

ところが、どんな危険思想をも持たない先生自身が、たんば老人より先にからきめにあうことになった。というのが、或る日の昏れがた、先生が資金調達から帰って来ると、待っていたように治助がどなりこんで来た。

「やい先生、よくもおれのかかあを取りゃあがったな」

そして彼は腕まくりをした。

治助はこの「街」ではたらき者に数えられている。としは四十七か八、子供は六人いたが、五歳になる末っ子のほかはみな、どこかへとびだしてしまった。おはちといういまの女房は三度めで、としは治助より二十歳くらい下であろう、東北の生れだというが色白のきりょうよしで、けれども子供たちの母親ではなく、治助と夫婦になってから、まだ二年そこそこにしかならなかった。

治助は平生おちついた男で、たんば老人の話によると、「めしを食ったものかどうかと、よくよく思案してみたうえで、初めてめしを食うことにきめた」