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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

二リットルの壜二本を一本半以上もあけ、肴もすっかり食いあらしてしまうと、かなえはげっぷをしながら帰ると云った。

「あー面白かった、あんたは教養があるから飽きないよ」かなえは京太にそう云った、「教養のない人間なんかと飲んだっても、それこそア・ラ・パレ、だね、ご馳走さま」

「まったくだな、うん」と京太は呟いた、「そんなやつはまったく、ア・ラ・パレだ」

おたねが荒地のどぶ川のところまで送っていった。

「ねえ、かなえちゃん」別れるときおたねが云った、「女の顔の悪口なんか云わないでおくれよ、可哀そうじゃないか」

「がんもどきかい、ふん」

「そんなこと云わないでおくれったら、あんたはきりょうよしだからいいだろうけどね」

「そんなこと云うまでもないわ」かなえは鼻を反らせた、「あたしはパパに一眼惚れされたんですもの、じゃさよなら」

それからこの「街」の人たち、ことに子供たちはかつ子のことをがんもどきと呼ぶようになった。かつ子は小学校を出ると、そのまま家にいて、内職をしたり家事の手伝いをしたりした。ちょっとでも手があけば、家の内外の掃除をし、隣り近所の分まで紙屑を掃いたり草を抜いたりするし、誰もいやがって手をつけないどぶ掃除も、月に一度はすすんでやった。