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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

京太は夜具を掛けてやろうとして跼んだ。発育のよくないかつ子の躯は、少女らしい魅力さえどこにも感じられなかった。胸も腰も少年のように骨ばっていて、ふくらみや柔軟さなどはまったく眼につかなかった。――ふだんは確かにそのとおりなのだが、ひびのいったガラス戸を透して来る、夜のほの明りのいたずらだろうか、京太の眼にうつったかつ子のあらわな足は、特に大腿部でやわらかい厚みと、重たげな張りをもって、おどろくほど誘惑的にみえた。

すぐに、かつ子は眼をあいた。眠りからさめたというより、眠っていなかった者が眼をあいたような感じで、そのまま眸子も動かさずに伯父をみつめていた。

「なんでもないんだよ」と京太は云った、「あたりまえのことなんだ。じっとしていればいいんだよ」

かつ子は例によってなにも云わず、ただ伯父の顔をみつめるばかりであった。その眼には驚きの色もなし感情のかけらもなかった。ガラス玉のように冷たく、透明なままであった。

「眼をつぶるんだ、かつ子」と京太が云った、「じっとして眼をつぶってればいいんだ、なんでもないんだから」

けれどもかつ子の眼は伯父をみつめたまま動かなかった。