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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

それは事実だが、彼女の顔はいつものとおり砥石のように平静で、感情を動かされたようなけはいはまったくなかった。

「だがでたらめはでたらめだ、ふん、でたらめでなにが証明できるか、え、なにが証明できるんだ」

京太はどなり続けた。

おたねが初めて反問した。

「かつ子が、なにかでたらめを云ったんですか」

「きまってるじゃないか、そうでなくって警察に呼び出されるわけがないだろう、あの不良娘め」と京太はどなり返した、「生みの親に捨てられたも同様なやつを、乳呑み児から苦労して育ててやったのに、その恩をいまになって仇しやがる、ちくしょうにも劣ったやつだ」

だが証明はできない、あいつになにが証明できる、と独りでどなり続けるのであった。

明くる朝、残りの酒をあるだけ飲んで、京太は家から出ていったが、警察へはあらわれなかった。彼は妻が内職仕事をもらう、三軒の問屋をたずね、三軒から前借した金を持って、行方を昏ましたのであった。

かつ子が家へ帰ったのは三カ月のちのことであった。保護施設のようなところへ入れられ、そこで中絶も済ませた。かつ子が未成年であったのと、自供の内容によって、法律的に中絶の処置がとられたのであろう。