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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

そこで話題は事業のほうへとぶのだ。いったいに土川春彦のすることや云うことは持続性がなく、いま木材について愚見を述べているかと思うと、急にシナ料理ではなにがうまいかと問いかけ、自分がもっとも好きなものはめしで、めしを胡麻塩で握ったものくらいうまくて精力のつく喰べ物は世界じゅう捜してもないだろう、と断言しながら、現在なにが有望かといえばセメント以上の事業はない、などと云いだすのであった。

こういう話題や、話題からジャンプする次の話題、さらに次の話題へとリレーするものが、聞き手にとってはべらぼうに退屈で、ばかばかしくて、生きているのがいやになるほどであった。塩鯖女史が復帰したのも、耳が遠いという器官の利があったからだろうし、居眠りをした何代めかのかぼちゃ氏を卑怯だというのも当っていないかもしれない。

土川春彦がちょろといわれる理由はもう一つある。彼はただ話しどおしに話すだけでなく、そのあいだ少しもじっとしていないということだ。七代目になってからはそれが特にひどくなった。つまりなにからなにまで自分がしなければならなくなったからだ。

たとえば朝、勝手で火をおこし、土釜でめしを炊き、味噌汁を作り香の物を切る。