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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

福田くんに廃品回収業の世話をしたのは、相沢七三雄であり、同時に自分の家の、空いている二階を提供したのであった。相沢は福田くんに好意をいだいているようだし、細君のますさんや、子供たちも同様らしいが、福田くんの妻の光子に対しては、嫌いである以上に反感をもっていたようであった。もっとも、この「街」で厚化粧をしたり、ばかげてはでな着物をひけらかしたりすれば、反感をもたれるか「おきちさん」と呼ばれるか、いずれかの難はまぬがれないのだが、光子の場合は相沢の四歳になる子にまで嫌われ、白い眼で見られるというめぐりあわせになった。

光子は福田くんを、「は、じ、めさん」と、飴を引き伸ばすようなあまったるい声で呼ぶ。福田くんは「みつ子」と呼び、するとそのたびに光子は、なーに、は、じ、めさんとあまったるい声で返辞をする。相沢の細君のますさんは頭痛持ちだということだが、そういう光子の声を聞くたびに、久しく砂糖をきらしたままだったことを思い出して頭痛がおこる、と苦情をいうのであった。

「うちの福田は大学の文科へいったんですのよ」と光子は初めてますさんと話したときにいった、「私立ですけれど有名な大学で、入学率は東大よりむずかしいんですって、家庭の事情で中退したんですけど、教頭先生がとても惜しがって、月謝が足りないのならはくぼくになっ