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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

五人の家族は黙々としてよくはたらいた。それは流れ作業のベルト・コンベアーの前に腰掛けた、五人の熟練工に似ているようであった。仮におるいさんを職長とすれば、そのうえになお彼女は、炊事と水道端の仕事と、家事のこまかい勤務を抱えていたのであった。

二女のふきも、中学校を出るとすぐ就職した。某運輸会社の給仕で、朝が早く、退社がおそく、出勤のほうは七時ときまっていたけれども、退社時間は早くて六時、おそいときには帰宅すると夜の九時すぎになることがあった。労働基準法というものがあり、すべての労働者はその法によって守られていると聞くが、「法」というやつは守られるよりも悪用されるためにあるのではないかと疑われる場合が稀ではないので、どうか読者諸氏はここで「労基法」を盾に筆者を攻撃しないでいただきたい。

ふきは現実にそのような勤務をし、超過勤務の手当さえない代りには不平もいわず、また姉のように進学の望みももたず、運命論者が運命に従順である如く従順に通勤し、帰宅すれば内職にはげむのであった。

貯金はふえていった。これほどの勤労と、粗衣粗食と、ぎりぎりまでの倹約をして、それでも貯金がふえないとしたら、銀行業の経営はずいぶん難渋することだろうと思う。