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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
譬えば十歳前後の子供を取り扱うには、もとよりその了簡を出ださしむべきにあらず、たいてい両親の見計らいにて衣食を与え、子供はただ親の言に戻らずしてその指図にさえ従えば、寒き時にはちょうど綿入れの用意あり、腹のへる時にはすでに飯の支度ととのい、飯と着物はあたかも天より降り来たるがごとく、わが思う時刻にその物を得て、何一つの不自由なく安心して家に居るべし。両親は己が身にも易えられぬ愛子なれば、これを教え、これを諭し、これを誉むるも、これを叱るも、みな真の愛情より出でざるはなく、親子の間一体のごとくして、その快きこと譬えん方なし。すなわちこれ親子の交際にして、その際には上下の名分も立ち、かつて差しつかえあることなし。世の名分を主張する人はこの親子の交際をそのまま人間の交際に写し取らんとする考えにて、ずいぶん面白き工夫のようなれども、ここに大なる差しつかえあり。親子の交際はただ智力の熟したる実の父母と十歳ばかりの実の子供との間に行なわるべきのみ。他人の子供に対してはもとより叶い難し。たとい実の子供にても、もはや二十歳以上に至ればしだいにその趣を改めざるを得ず。