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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

今の人事において男子は外を務め婦人は内を治むるとてその関係ほとんど天然なるがごとくなれども、スチュアルト・ミルは『婦人論』を著わして、万古一定動かすべからざるのこの習慣を破らんことを試みたり。英国の経済家に自由法を悦ぶ者多くして、これを信ずる輩はあたかももって世界普通の定法のごとくに認むれども、アメリカの学者は保護法を唱えて自国一種の経済論を主張する者あり。一議したがって出ずれば一説したがってこれを駁し、異説争論その極まるところを知るべからず。これをかのアジヤ諸州の人民が、虚誕妄説を軽信して巫蠱神仏に惑溺し、あるいはいわゆる聖賢者の言を聞きて一時にこれに和するのみならず、万世の後に至りてなおその言の範囲を脱すること能わざるものに比すれば、その品行の優劣、心志の勇怯、もとより年を同じゅうして語るべからざるなり。

異説争論の際に事物の真理を求むるは、なお逆風に向かいて舟を行るがごとし。その舟路を右にし、またこれを左にし、浪に激し風に逆らい、数十百里の海を経過するも、その直達の路を計れば、進むことわずかに三、五里に過ぎず。航海にはしばしば順風の便ありといえども、人事においてはけっしてこれなし。