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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
これまた国民と政府との約束なり。ゆえに国民の政府に従うは政府の作りし法に従うにあらず、みずから作りし法に従うなり。国民の法を破るは政府の作りし法を破るにあらず、みずから作りし法を破るなり。その法を破りて刑罰を被るは政府に罰せらるるにあらず、みずから定めし法によりて罰せらるるなり。この趣を形容して言えば、国民たる者は一人にて二人前の役目を勤むるがごとし。すなわちその一の役目は、自分の名代として政府を立て、一国中の悪人を取り押えて善人を保護することなり。その二の役目は、固く政府の約束を守りその法に従いて保護を受くることなり。
右のごとく、国民は政府と約束して政令の権柄を政府に任せたる者なれば、かりそめにもこの約束を違えて法に背くべからず。人を殺す者を捕えて死刑に行なうも政府の権なり、盗賊を縛りて獄屋に繋ぐも政府の権なり、公事訴訟を捌くも政府の権なり、乱暴・喧嘩を取り押うるも政府の権なり。これらの事につき、国民は少しも手を出だすべからず。もし心得違いして私に罪人を殺し、あるいは盗賊を捕えてこれを笞うつ等のことあれば、すなわち国の法を犯し、みずから私に他人の罪を裁決する者にて、これを私裁と名づけ、その罪免すべからず。