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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

余輩もとより和漢の古学者流が人を治むるを知りてみずから修むるを知らざる者を好まず。これを好まざればこそ、この書の初編より人民同権の説を主張し、人々みずからその責めに任じてみずからその力に食むの大切なるを論じたれども、この自力に食むの一事にてはいまだわが学問の趣意を終われりとするに足らず。

これを譬えば、ここに沈湎冒色、放蕩無頼の子弟あらん。これを御するの法いかがすべきや。これを導きて人となさんとするには、まずその飲酒を禁じ遊冶を制し、しかる後に相当の業につかしむることなるべし。その飲酒、遊冶を禁ぜざるの間は、いまだともに家業の事を語るべからず。されども人にして酒色に耽らざればとて、これをその人の徳義と言うべからず。ただ世の害をなさざるのみにて、いまだ無用の長物たるの名は免れ難し。その飲酒、遊冶を禁じたるうえ、またしたがって業につき、身を養い、家に益することありて、はじめて十人並みの少年と言うべきなり。自食の論もまたかくのごとし。

わが国士族以上の人、数千百年の旧習に慣れて、衣食の何ものたるを知らず、富有のよりて来たるところを弁ぜず、傲然みずから無為に食して、これを天然の権義と思い、その状あたかも沈湎冒色、前後を忘却する者のごとし。