轻松读懂日语经典作品
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
「――今年の五月だったと思うが……」
「そう、五月ね、それを聞いておかなくっちゃあ、……だって知らん顔をしているわけにはいかないでしょ、お産するとなればいろいろ、……あたしとしたって、してあげなければならないことがあるし、……でもわかってよかったわ、あたしちっとも知らなかったんですもの、よっぽどばかでぬけてるのね」
「――お孝、おれが悪かった」
時三は顔をあげてお孝を見た。きれいな澄んだ眼に涙が溜まっていた。
「――魔がさしたんだ、……まちがいだったんだ、本当に悪かった、勘弁して呉れ」
「いいわよ、もういいのよ、誰にだってまちがいということはあるわ、あたしだって、……あら、お父つぁんが呼んでるんじゃないかしら」
お孝はあたふたとそこを立った。
良人の前ではとうとう泣かずに済んだ。恨むこともできなかった。そしてそれから二三日は気分も明るく、ふだんと同じように笑ったり、陽気にお饒舌りをしたりした。……だが或る夜、良人が自分の夜具へ手をかけたとき、その瞬間、お孝は激烈な嘔きけを感じ、お勝手へいって、嘔こうとして、こんどはとつぜん胸をずたずたにひき裂かれるような、非常な苦悶と絶望におそわれ、呻き声をあげてそこへ倒れた。