轻松读懂日语经典作品
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
家は三代続いた袋物商で、采女町の「田村」といえば一流の店でとおっていた。田村から出て店を持ったものが七軒あり、これをたなうちといって、親類同様にでいりしているが、この人たちがはやくからお孝に縁談をもちだしてきた。それはお孝がひとり娘だからどうせ婿を取らなければならない、「本店」がおちつかないとたなうちも安心できないという公式論であった。……その裏には「本店」をめぐる親類やたなうちの、一種の競争のようなものもあったらしいが、それはべつとして、お孝もうすうす感じていたのは、父親の伊兵衛の問題であった。
お孝の母はいねといって、お孝の九つの年に亡くなったが、家つきの娘で、伊兵衛は店で育って婿になおったのである。いねはお孝よりずっと縹緻よしだった。なにがしとかいう絵草紙屋が、一枚絵にしたいと云って交渉に来たこともあるそうで、これはもちろん謝絶したが、そのくらいきれいだった代りに躯が弱く、医者のでいりの絶えることがなかった。……そんなところから、気性の知れた温和な、酒も煙草ものめない伊兵衛が選ばれたものらしい。……予想どおり伊兵衛はいい良人だった。いねはお孝を産んでから一年の半分は寝ているというふうで、小田原町の大川に近いこの家も、彼女の療養のために建てられたものであるが、伊兵衛はその小田原町の家と店とを往復する