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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

なんとなしに物新しい心のときめきといったようなものを感じた。それは子供の時分に何か長くほしがっていた新しいおもちゃを手に入れて始めてそれを試みようとする時、あるいは何かの研究に手をつけて、始めて新しい結果の曙光がおぼろに見え始めた時に感じるのと同じようなものであった。天地の間にあるものはただ向こうの森と家と芋畑とそして一枚のスケッチ板ばかりであった。

向こうの小道をまれに百姓が通ったが、わざわざ自分の所までのぞきに来る人は一人もなかった。

どれだけ時間が経過したかまるでわからなかった。ただ律儀な太陽は私にかまわずだんだんに低くたれ下がって行って景色の変化があまりに急激になって来るので、いいかげんに切り上げてしまわなければならなかった。軽く興奮してほてる顔をさらに強い西日が照りつけて、ちょうど酒にでも微酔したような心持ちで、そしてからだが珍しく軽快で腹がいいぐあいにへっていた。

停車場まで来ると汽車はいま出たばかりで、次の田端止まりまでは一時間も待たなければならなかった。構外のWCへ行ってそこの低い柵越しに見ると、ちょうどその向こう側に一台の荷物車があって人夫が二人その上にあがって材木などを積み込んでいた。