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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
それを説明してもらいさえすれば、もう決して笑わなくてもいい事になるのであった。
「男というものはそうむやみになんでもない事を笑うものではない」というような事を常に父から教えられ自分でもそう思っていた。いわんやなんら笑うべき正当の理由のないのに笑うという事は許すべからざる不倫な事としか思われなかった。それで、ある時だれか他家のおばさんが「それはどこかおなかに弱い所のあるせいでしょう」と言ってくれた時には、何かなしに一種のありがたい福音を聞くような気がした。なんだか自分の意志によって制すべくして制しきれない心の罪が、どうにもならない肉体の罪に帰せられたように思われた。
いわゆる笑うべき事がない時に笑い出すのは医者に診てもらう場合に限らなかった。
いちばん困るのは親類などへ行って改まった挨拶をしなければならない時であった。ことに先方に不幸でもあった場合に、向こうで述べるべき悔やみの言葉を宅から教わって暗記して行って、それをそのとおりに言おうとする時に、突然例の不思議な笑いが飛び出してくるのである。その時の苦しさは今でも忘れる事ができない。なかなかおかしいどころではなかった。