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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

しかし不思議なものでこの粗野な玉の食い物に対する趣味はいつとなしに向上して行って、同時にあのあまりに見苦しいほどに強かった食欲もだんだん尋常になって行った。挙動もいくらかは鷹揚らしいところができてきたが、それでも生まれついた無骨さはそう容易には消えそうもない。たとえば障子の切り穴を抜ける時にも、三毛だとからだのどの部分も障子の骨にさわる事なしに、するりと音もなくおどり抜けて、向こう側におり立つ足音もほとんど聞こえぬくらいに柔らかであるが、それが玉だとまるで様子がちがう。腹だか背だかあるいはあと足だか、どこかしらきっと障子の骨にぶつかってはげしい音を立て、そして足音高く縁側に、おりるというよりむしろ落ちるのである。この区別はあるいは一般に雌雄の区別に相当する共通のものであるかどうか私にはわからない。しかし考えてみると人間の同じ性のものの中でもこれに似た区別がかなりに著しい。ちょっと一つの部屋から隣の部屋へ行く時にも必ず間の唐紙にぶつかり、縁側を歩く時にも勇ましい足音を立てないでは歩かない人と、また気味の悪いほどに物音を立てない人とがある事を考えてみると、三毛と玉との場合にもおもな差別はやはり性の相違ばかりではなくて個性の差に帰せらるべきものかもしれない。