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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
永代橋から一樽の酒をこぼせば、その中の分子の少なくもある部分はいつかは、世界じゅうの海のいかなる果てまでも届くであろうように、それと同じように、楽器でも言語でも、なんでも、不断に「拡散」を続けて来たものであろうと思われる。ただ溶媒中における溶質分子の拡散と比べてはなはだしく幾重にも複雑な方則に支配されるであろうし、拡散する「物」の安定度が少ないために、事がらがいっそう込み入って来るのであろう。
以上は畢竟一つの空想に過ぎない。ただ、近来わが国固有文化に関する研究が急激に盛んになって来たのに気がついて、愉快に感じると同時に自分も知らず知らずその趨勢に刺激されて、つい柄にない方面にまで空想の翼を延ばしたくなったようなわけである。杜撰な考証に対してもし識者の教えを受ける縁ともならば大幸である。
(お断わり。楽器の名のかな書きに直し方に不穏当なのがあるかもしれない。どうかそのつもりで読んでもらいたい。)
(昭和三年一月、大阪朝日新聞)