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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

いつもこんなことを考えながら一杯のコーヒーをすするのである。

震災前の東京は、高い所から見おろすと、ただ一面に鈍い鉛のような灰色の屋根の海であった。それが、震災後はいったいにあたたかい明るい愉快な色の調子が勝って来た。それと同時にそういう所で仰ぎ見る空の色が以前よりも深く青く見えだしたような気がする。これはコントラストのせいであろう。これほど著しい色彩の変化が都人の心に何かの影響を及ぼさないはずはないという気がする。

実際は東京の空気は年々に濁るはずである。自動車のガソリンの煙だけでも霧の凝縮核を供給することはたいしたものであろう。寒い曇天無風の夜九段坂上から下町を見るといわゆるロンドンフォッグを思わせるものがある。これも市民のモーラルを支配しないわけにはゆかないであろう。

五

上野のデパートメントストアの前を通ったら広小路側の舗道に幕を張り回して、中に人形が動いていた。周囲に往来の人だかりのするのを巡査が制していた。なんとなく直感的にその幕の中には人が死んでいそうな気がしたが、夕刊を見るとやっぱり飛び降り自殺であった。あまり珍しくないそれであった。