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しょうせつのタネ
小説のタネ
吉川 英治
「文藝春秋」1957(昭和32)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,376 字 · 23 页
宗教を描く難しさ
どうもこれは、しかたがない。
宗教を描く難しさ
「平将門」は将門の死まで書きましたけど、「高山右近」は途中で切れています。つまり、デウス右近とまで成らない、彼がほんとのクリスチャンにならない辺で終ってます。あれを読売新聞に書いたのが終戦後で、当て込みに書いたように云われましたが、決してそうじゃありません、戦国時代の切支丹大名の生態もおもしろいし、キリスト教の持ってる恋愛観っていうものに僕は問いたいものがあったんです。いってみれば、キリスト教では“マリアは婚せずして孕む”といったような口を拭いてるところがあるでしょう。僕は禅のことなんかは詳しく知らないんですが、少なくとも東洋の禅なんかだと、そこはもっと突っこんでますね、恋愛、性慾そのものへ、生身でぶつかっているところがある。捨身でそこを割り切ろうとした人間もいますよね。
終戦直後の、一頃、激しい性行動の混乱時代があったでしょう。文壇では「肉体の門」あたりを契機にして、あれが作品でなく、街上そのものに溢れていろんな現象の見られたことがあったでしょう。それを、その性慾の問題などを「高山右近」では書きたいとしてかかってみたんですよ。