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にじ
彩虹
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页
それは十八の乙女の情熱を表白するような、眼つきだった。伊兵衛は眼叩きをしながらその視線を避け、
「脇田はだいぶ急いでいるようだから、なるべく返辞は早いほうがいいな」
と云った。
数日して江戸から三人の青年が帰藩した。又木内膳、戸田大学、津村条太郎といい、宗之助が国老就任の場合その帷幄に入る者らしく、帰るとすぐ脇田家に詰めて出入りとも宗之助から離れず、城中での記簿検閲にもこの三人が補助の役をするようになった。……彼らの調査はしばしば越権にわたるほど思い切ったものだったが、国家老大槻又左衛門は温厚一方の人物だし、国老交替の期も迫っているので、あえて違法を鳴らす者もなく、寧ろあっけにとられて眺めているという感じだった。
「これは恐るべき無為だ」
宗之助は伊兵衛の顔を見るとよくそう云った。
「……いかに世が泰平であり、五万石に足らぬ小藩とはいえ、この政治の無能無策はなんとしたことだ、大げさに云えばこの十年間まるで眠っていたようなものだぞ、いったい年寄役としての其許からしてなにを視ていたのかね」
「政治のどこが眠っていたか、その言葉だけでは返辞のしようもないが、領内が平穏に治まって四民に不平がなければ」