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にじ
彩虹
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页
と、蜂谷恭之進が云った。
「……これらの評判はみな脇田殿の周囲から出ているのです、なかには、ことに郷村へ向けては、文書で通告されているものもあり、それは現に私が見ています」
そして四人の者が交互に語るところは、理由は判然としないが、とにかく脇田の帷幄から相当思い切った迎合政策の前触れが出ているということ、それが非常な勢いで領内に広まっているという事実だった。
「脇田殿の真意はわからないが、かような実行不能なことを申し触らすことは、御政治向きの上に面白くない影響を及ぼすのは必至で、今のうちなんとか方法を講じなければと思い、御相談にまいったのですが」
「すぐには信じ兼ねる話だが」
と、伊兵衛は暫らく考えたのち云った。
「……もし風評が脇田から出たとすると、彼にどんな思案があるにしても捨てては置けないでしょうな」
「そこで御相談なのですが、表向きにすると事が大きくなりますから、樫村殿から話をして頂いて、できる限り早く風評の根を絶つよう手配をしたいと思うのです」
「ひき受けましょう」
伊兵衛は快よくうなずいた。
「……彼の思案に依っては承知しないかも知れないが、とにかくすぐ話にはゆきます」