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かれがころしたか
彼が殺したか
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页
七
此の言葉を何ときいたか――道子は俺の方を見て一寸微笑んで見せた。道子も或いは、俺がはじめわざと彼女の牌で和らなかったのだと思っていたのではあるまいか。
斯うして嵐の夜は、こんな変な気分と共に更けはじめたのである。
俺は階下の一室に床をとってもらってねることになった。
俺は度々清三にも会っているが、今日ほどはっきり彼に不愉快なことを云わした事もないし、又云われた事もなかった。何となく痛快なような気もちであったが、同時に又何ともいえぬ不気味な気もちになった。
こうやって終いに俺はどうなるのだ。人妻に恋していてどうするのだ。と誰かささやくような気がする。
七
清三と道子は丁度俺のねている室の上にねているわけである。俺はかつて一度も、道子と同じ屋根の下で夜を明した事はない。この夜がはじめてである。
自分が生命をかけて恋している女、それが他人の妻である。その夫婦が、今自分の室の上で同じ室にねているのだ。こう考えただけで俺はとうてい眠られそうもないと思った。
はじめは、海で泳いだ疲れの為に、何となく眠られそうだったが、然しいろいろのことを考え出すと、目はさえて来てとても眠られそうにもない。