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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

謎の咬傷

一

一

これも霧原警部の「特等訊問」の話である。

銀座四丁目に、貴金属宝石商を営んでいる大原伝蔵が、昨夜麹町区平河町の自宅の居間で、何ものかに殺されたという報知が、警視庁へ届いたのは、余寒のきびしい二月のある朝であった。

霧原警部は、部下の朝井、水野両刑事と警察医とを伴って、直ちに自動車で現場調査に赴いた。大原の邸宅は大震火災直後バラック建になっていて、石の門柱をはいると、直径十間ばかりの植込みを隔てて右手が洋式の平家、左手が日本風の平家で、中央は廊下でつながれ、玄関は日本建の方について居た。

警部の一行が到着すると、番に来ていた巡査と、この家の書生とが出迎えた。霧原氏は靴を脱いで上り、その場で、死体発見の始末をきいた。

大原は先年夫人を失ってから、まだ五十歳になるかならぬではあるが、その後ずっと独身生活を営んできた。子がないので、家族といえば、中年の女中と、今年二十歳の書生との三人である。氏は若い時分に米国に長い間暮したためか、簡易な生活が好きで、いつも洋館の方で寝起した。洋館は書斎兼居間と寝室と物置室とから成っていたが、氏は多くの場合、物置室の裏の扉から出入りして、用事のあるときはベルを鳴らし、女中や書生は主人の顔を見ない日さえあった。