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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

夫人が気が附いて見ると大原はそこらに居なかった。はっと思って頭に手をやると髪の毛がひどく乱れていたので、夫人は非道な方法で大原のために操を破られたと思ったのである。

夢中で走り帰った夫人は、良人にとがめられて、何もかも告げてしまった。が、寒い室に長く横わって居たためか、それとも麻酔剤のためか、或いはまた神経に強い打撃を受けたのか、その夜から高熱を出して、肺炎になり、三日の後に死んでしまった。死ぬが死ぬまで彼女は、良人に向って「どうぞかたきをとって下さい。ああ、大原の咽喉笛に咬みついて殺してやりたい」と言い続けたのである。

細君思いの谷村は、夫人の臨終の床で必ずかたきをとってやると誓った。そして細君の臨終の言葉をそのまま実行しようと決心した。彼は細君を火葬に附して、骨上げをした歯骨の中から上下の門歯と犬歯合せて十二本を取り出し、それを上下の顎の大きさの金具に排列し、更にそれを鋳物のときにつかう釘抜のような鉗子の先へ固定し、大原の咽喉笛をはさみ切って殺そうと計画したのである。

「火に焼けた歯は脆くなると言いますが、一念がこもっていたと見えて、鋼鉄のように丈夫でした」