轻松读懂日语经典作品
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じょうき
情鬼
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,393 字 · 35 页
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日記は日本語と仏国語と半々位に書かれてあった。夫人を失った悲しみが胸を打つらしく、至る処に悲痛な歎きが見出される。ある時は夫人の後を追うて、死を切望するらしい文字もあった。私は小田切さんを知っているだけに、彼の心中を思って涙ぐましい気持になった。過去の古疵から何を探り出そうとするのだろうか、夫人の冷めたい態度に思わず軽い反感をいだいた。この上死者の心を傷けたくない、汚したくない。しかしそんな気持などにはまるで頓着なく夫人はノートを久子さんに返しながら云うのだった。
「おついでにアドレッス・ブックも拝見出来ないでしょうか?」
久子さんはまた立ってアドレッス・ブックを持って来た。
夫人は頻りにページを繰って何か探し求めている容子だったが、軈て見つかったものと見えて、自分の手帖を出して書き留めていた。私は何気なく覗き込んでみると、それは吉岡五郎という人の宿所であった。
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「吉岡五郎さんと仰しゃる方は?」
夫人は自分の手帖を納めながら久子さんに訊いた。
「吉岡さんは兄の秘書官でしたの」
そう云って、何故か久子さんはちょっと顔を赤くした。
「秘書官? と仰しゃるとやはり外務省の方でございますね?」