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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

そして人間の個性に宿った本能即ち愛が如何なる要求を持つかを肯んじた。そして更に又動物に現われる本能が無自覚的で、人間に現われる本能が自覚的であるのを区別した。自覚とは普遍智の要求を意味する。個性はもはや個性の社会に対する本能的要求を以て満足せず、個性自身、その全体の満足の中にのみ満足する。そこには競争すべき外界もなく、扶助すべき外界もない。人間は愛の抱擁にまで急ぐ。彼の愛の動くところ、凡ての外界は即ち彼だ。我の正しい生長と完成、この外に結局何があろうぞ。

(以下十余行内務省の注意により抹殺)

私はこの本質から出発した社会生活改造の法式を説くことはしまいと思う。それはおのずからその人がある。私は単にここに一個の示唆を提供することによって満足する。私が持って生れた役目はそれを成就すれば足りるのだから。

宗教もまた社会生活の一つの様式である。信仰は固より人々のことであるが、宗教といえばそれは既に社会にまで拡大された意味をもっている。そして何故に現在の宗教がその権威を失墜してしまったか。昔は一国の帝王が法王の寛恕を請うために、乞食の如くその膝下に伏拝した。