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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
さすがの百々子も、呆れて、ゲラゲラ笑っていると、お早うございますといって、調達局の調査班だという若いひとがやってきた。
「さっそくですが、おねがいいたします」
引合せの前に、改変の程度を、ざっと下見しておいてくれというので、それから、四人でつながって、邸のなかを見て歩いた。
足ついでに、西北にあたる一廓からはじめる。
西北の端になるところは、もとは上ノ厠といって、繧繝縁の畳を敷いた、二ノ間付き八畳の厠で、地袋の棚に、書見台と青磁の香炉が載っているという、格調の高い場所だったが、そこが、どういう都合でか、三方にフランス窓をあけた、小粋な小客間に改造されているのには仰天した。
植込みのなかに突きだした『ご不浄のサロン』は、芽出しの若葉に三方から囲まれ、ソファに坐って窓のほうを見ると、いぜん、われわれが、しゃがみながらながめたその位置に、むかしどおりの布袋竹と丁字の葉むらが、そよそよと風にそよいでいる。お尻のあたりが、みょうに、こそばゆくて、落ち着いて掛けていることができなかった。
そこから、太鼓なりの渡橋をわたって、入り側になった広廊へ行く。
ながながとつづくここの畳廊下で、子供のころ、よく駆けまわって遊んだものだったが、むかしの夢のあとなどは、どこにもない。