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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

お絹は電話で、昨夜道太が行った料亭へ朝飯を註文した。

「御飯も持ってきてね、一人前」

それからまた台所の方にいたかと思うと、道太が間もなく何か取りかたがた襦袢を著に二階へあがったころには、お絹は床をあげて、彼の脱ぎ棄ての始末をしていた。

「ここもいいけれど、昼間は少し暗い」道太はそう言ってちょっと直しさえすれば、ぐっと引き立ってくるだろうと、そんな話をしかけた。

「そんなことも考えるけれど、私のものでもないんですから」

「誰のものなんだ」

「いったん人手に渡ったのを、京ちゃんの旦那が買ったんです。あの人はここへお金をかけるのは損だから、売ってしまおうと言っているんですけれど、何しろお母さんが長くやっていた所ですから」

「じゃ絹ちゃんが借りてやっているわけだね」

「ここのお神さんはおひろちゃんですよ。私は世話焼きに来ているだけなんです。いつまでこんなこともしていられないんです。働けるうちに神戸へ行って子供の守でもしてやらなければ」そして彼女は汚れた肌襦袢を取りあげて、

「これ洗濯に出してもいいんでしょう」

「そうね。出してもらおうか」道太は東京を立つ時から繃帯をしていた腕首のところが昨日飲みすぎた酒で少し痛みだしていたので、信州で有名な接骨医からもらってきたヨヂュームに似たような薬を塗りながら、