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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

朝倉城代は例のとおり先に帰ったものと思ったが、控え所に戻ってみると、宗兵衛と共に老人が待っていた。

「ちょっと坐ってくれ」と宗兵衛が呼びかけた、「要屋から願いが出されたんだ」

朝倉老は直衛が坐るのを、冷たい眼で睨みながら、膝の上でやかましく扇子を開いたり閉じたりしていた。

「訴えの取下げか」と直衛がきいた。

「どうしてわかった」

「そろそろくるころだと思っていたよ」と直衛は云った、「条件はどうだ」

「ちょっと待て」と朝倉摂津が云った、「そろそろくるころとは、どういう意味だ」

「どういう条件だ」と直衛は宗兵衛にきいた。

「おれがきいているのだ」と摂津は怒りを抑えた口ぶりで云った、「そのほうは要屋が取り下げにくるのを待っていたのか」

直衛は向き直り、袴の膝に両手を置いて城代を見た、「どのような理由がありましょうとも、この裁きにはお口出し無用と申上げました、もしまた御不満なら、ただいまからでもお役御免にしていただきます」

摂津の顔が赤黒くなり、ぎらぎらする眼で直衛を睨みつけたが、とつぜん立ちあがると、扇子で袴をぴしりと打って出ていった。

「ひどいやつだ」と宗兵衛が云った、「なにも怒らせることはないじゃないか」