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しんこざいくれんがのみちすじ
新古細句銀座通
岸田 劉生
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页
毛断嬢(一)
とはやし、他の客のきき慾をそそっていた男があった。如何にも道楽者らしい年配の顔の長い男であったが、何という事なしに私はこの男がきらいであった。しかしこれも今はなつかしい。
「おバあさんが夜なべに絹針ときたら行灯の前で」とかなしげに唱えて、「親孝行のおみやげはこれが一番」と針のめど通しをうる男や、「オランダのコッペイ散、やわ/\のぐい/\、ぐい/\のやわ/\」などという珍なものもあるが夜店ばなしはこれ位にして、今度は、今日の銀座を歩きながら、新を語り、旧を思ってみる事としよう。
毛断嬢(一)
新橋が美しい鉄のらんかんの橋となったということを私はおぼえているような気がする。角には博品館という東京一の勧工場があったが、これはもと博品館とはいわず、俗に新橋の勧工場といっていたが、私が十一、二の頃に改築されて博品館となったものである。これが出来た時はなか/\の評判であった。定まった階段というものがなく、道が坂になっていて、途中二、三段位のゆるい階段が所々にあるきりで、自然と階上に行ってしまうという趣好が歩道にあるスリガラスの光りとりとともに評判であって、出品物も中々いいものがあり、何となく高級という感じを私どもが持っていたものである。