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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
哲雄君はポケットに用意していた麻縄を出して、それを穴の中へたらしてやりました。
「この縄につかまるんだよ。僕たち二人で引っぱってやるからね」
そして、やっとのことで、保君は穴の外へはいだすことが出来たのですが、穴の中には雨水がたまっていたと見えて、ズボンやシャツはもちろん、手も足も、顔までも、どろまみれです。
「どうしてこんなところへ来たのさ。僕たちゆうべから、どんなに心配したかしれやしないぜ」
一郎君にたしなめられて、保君は泣き出しそうな顔をしています。かわいそうに昨日の昼から何もたべないで、一晩中穴の底で助を呼んでいたのですから、もうグッタリつかれてしまって、あの元気なチャメのター公のおもかげは、どこにもありません。
二人にせめ問われるままに、保君は昨日森の中で大蛇に出あったこと、夢中になって逃げているうちに、この穴の中へ落ちこんだこと、そして一晩中、大声に叫んでいたことなどを物語りました。
二人は大蛇と聞いてギョッとしましたが、でも、保君がその大蛇に危害を加えられなかったのは、何よりでした。それを思えば、おとし穴へ落ちたのなぞ、なんでもありません。