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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

「ねえ君、こいつも連れてってやろうよ。こんなになついているのを、残しておくのはかわいそうだよ。それに、こいつだって、海賊船なんかにいるよりは、僕たちのお供がしたいんだよ。ホラね、こんなに体をすりつけて来るじゃないか」

これには一郎君も哲雄君もすぐ賛成しました。淋しい異境の空で、たとえ犬一匹でも、なかまの多いのは心丈夫というものです。

「じゃ、僕が一番のりだよ」

勇敢な一郎君が、ボートの綱を出来るだけ引きよせて、手すりにしっかりしばりつけ、ヒラリと身をおどらすと、その綱をつたって、スルスルとおりて行きました。学校の鉄棒できたえた腕前です。

次には哲雄君、それから、保君がさし出す犬を、下の二人が苦心をして受取り、最後に、保君が、例のえたいのしれぬ白い袋を、首にくくりつけて、珍妙な恰好ですべり落ちて来ました。

「じゃ、いいね、綱を切るよ」

一郎君は小声で言って、ポケットから愛用のジャック・ナイフを取出すと、それでボートの索綱をプッツリと切断しました。

こうして、三人はとうとう目的を達したのです。でも、ボートに乗りうつっただけでは、まだ安心は出来ません。船をはなれない中に、どんなことで海賊共に見つからぬとも限りませんし、たとえ無事に逃げだすことが出来たとしても、港までは相当の距離があるのです。