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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「この縄が木登の秘伝だよ。僕いつかお父さんに教わったんだ。見ててごらん。いいかい」
保君は得意らしく言って、靴をぬぎますと、その輪になった縄を、両足にはめて、そのまま椰子の木にとびつきました。そして、幹に抱きついて、グイグイと登って行きます。縄の輪を両足にはめて、それを力にしてふみこたえるのですから、すこしもすべり落ちる心配がありません。なるほどうまい考えです。保君が秘伝だといって、じまんするだけのねうちがあります。
保君は、見る見る高い椰子の木のてっぺんに登りつき、持って行ったジャック・ナイフで大きな椰子の実を切りとりました。
「いいかい。投げるよ」
と空からほがらかな声が響いて来ます。
「いいよ。サアここへ……」
下の二人は、椰子のてっぺんの保君の小さな姿を見上げて、両手をひろげました。
椰子の実は固くて、その上高いところから投げるのですから、ずいぶんひどい手ごたえでしたが、二人はうまくそれを受取ることが出来ました。一つ、二つ、三つ、大きな実ですから、三つあれば十分です。
保君は、凱旋将軍のような顔をして、スルスルと椰子の木をおりて来ました。そして、三人はそこに坐って、椰子の実にナイフで穴をあけて、そこへ口をつけて、まだ熟しきっていない肉の中の、甘い甘い汁をすするのでした。