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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「ア、あれだ」
保君が指さすところを見ますと、歯朶の葉にうずまるようになって、一匹のけものが倒れていることがわかりました。猛獣ではありません。ポパイよりも少し大きい、脚の細いきゃしゃなけものです。
「ナアンだ。これ鹿じゃないか」
動物園で見なれている日本の鹿とは少し変っているようでしたが、でも鹿の一種にちがいありません。
「かわいそうに、ポパイが食い殺してしまったんだね。でも、こんな奴なら安心だ。僕は恐しい猛獣じゃないかと思ったんだよ」
一郎君が鹿の死骸をのぞきこみながら、いいますと、保君は、
「ウン、僕もさ。だが、ポパイ、お前強いんだねえ。まるで映画のポパイとそっくりじゃないか」
とたのもしげに、ポパイの頭をなでてやるのでした。
「でも、安心は出来ないぜ。こんな鹿ばかりならいいけれど、この森の奥にはどんな猛獣がいるかも知れないからね」
一郎君が気味わるそうに、しずまり返ったあたりを見まわしました。
「ウン、そうだよ、椰子が生えているのを見ると、ここはやっぱり南洋のどこかの島にちがいないが、地理で教わったように、南洋にはずいぶん恐しい猛獣がすんでいるんだからね」