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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

「ア、そうだっけ。困ったなあ。オイ、哲雄君、君の智恵で考えておくれよ。火がなくってごはんのたける法か、それとも、マッチがなくて火の燃える法でもいいや」

「ウン、僕もそれを考えているんだよ」

哲雄君は保君のじょうだんに、まじめな顔で答えました。そして、又言葉をつづけて、

「だが、まだたりないものがある。火だけじゃだめだよ。水がなけりゃごはんは焚けやしない」

「ア、そうだ。水もないんだねえ」

保君は又頭へ手をやって、目の前一ぱいにひろがっている海の水を、うらめしそうにながめました。

そういえば三人とも、きのうあたりから、がまんが出来ないほどのどがかわいていたのです。椰子の実もはじめはおいしかったのですが、そればかりでは口の中が甘くなってしまって、味のない水が飲みたくてしかたがなかったのです。難破船の料理部屋には、大きな水槽があったのですが、底がやぶれて、中の水はみな流れ出してしまっていました。

「アア水が飲みたいなあ」

無邪気な保君は、何でも思ったことを、そのまま口に出します。

ほかの二人も、それを聞くと、にわかにのどがかわいているのを感じました。そして、あの水道や井戸の中にいくらでもある、すこしのねうちもないような水が、どんなに貴いものかということが、ハッキリわかったような気がしました。